++ その笑顔のために ++





 ある人は俺に言う。

『お前はオリヴァルト皇子に少々厳しすぎるのではないか?』、と。

 ……馬鹿を言ってもらっては困る。

 自分で言うのも嫌になるが、俺ほどあいつに甘い人間はいないだろう。

 俺に対してふざけた態度を取れば怒鳴られるのも縛られて吊るされるのもあい

つはわかっている。

 そう。全部わかった上で、あいつはそれでも俺の前で馬鹿をするのだ。

 すなわちそれは、オリビエがああされることを望んでいるということ。

 ……昔からそうだった。

 あいつは俺に構われていないと自分の存在価値を見出すことができない子供

だった。

 皇帝の正妻の子ではないというだけで周囲から冷たくされていたあいつにとって

俺は初めてできた『友達』だった。

 だからだろう。

 誰かに構ってほしくて、本気で叱られることが嬉しくて、必要以上に俺の手を焼

かせるようなことをする。

 いつしかそれが板についてしまって今のような関係になってしまったが……それ

でも俺は今も、あいつの望む反応を繰り返している。

 これを甘いと言わずに何と言うのだろうか?




 ある人は俺に言う。

『あのような放蕩皇子の世話など苦にならないか』、と。

 ……馬鹿を言ってもらっては困る。

 本当に苦だとしか思わないのなら、とっくの昔に逃げ出している。

 俺はそこまで義理堅くもなければ根性のある人間でもない。

 ただ俺がそこにいたいからそこにいるだけ。

 ヴァンダールの家のことも、相手が皇族であるということもどうでもいい。

 俺がオリビエを守ってやりたいと思っているから、そしてオリビエもそれを望んで

いるからあいつの隣にいるだけなのだ。

 ……昔からそうだった。

 子供の頃のあいつは普段は寂しそうな顔をしているくせに、俺を見ると本当に嬉

しそうに笑うのだ。

 俺の前でだけは、年相応の子供らしい表情を見せるのだ。

 それに気付いた瞬間から、俺はあいつに捕らわれている。

 あいつから笑顔を奪いたくないとそう思うようになり……俺は、生涯をかけてこ

の阿呆を守り抜こうと誓ったのだ。

 だからあいつに頼られることを誇らしく思えど、苦に思うことなど万に一つも有り

得ない。

 あいつの側にいることを許されている。

 あいつの笑顔を守ることができる。

 ただそれだけのことが、俺にとっては何にも換えることのできない、かけがいの

ないことなのだから。




PS.
……もちろんこんなことを言えば調子に乗るのは目に見えているので、決して口

外はしないように。













なんとなく対になるように目指して書いてみた。

2011.3.20 UP

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