++ 理由 ++






「……おい、オリビエ。開けろ」

少年の苛立ちを帯びた声が、広くひんやりとした廊下に響いている。

「オリビエ。聞こえているんだろう?」

目の前で沈黙を守っている扉を何度も叩くのは、少し骨ばってきて少年らしさを無

くしはじめた手。

そして扉を睨みつけるようにしている鋭い青い瞳。……けれど今は、その瞳より額

から後頭部にかけてぐるりと何重にも巻かれている包帯に目が入る。

「……お前。そんなに俺を怒らせたいのか?」

少年……ミュラーは眉間に皺を寄せながら唇を真一文字に引き結ぶ。

無駄だとは思うがドアノブを握り締めて回してみた。けれど案の定、ノブはガチャ

ガチャと鳴るだけで扉が開く気配はない。

「………………」

ミュラーのこめかみにピシリと青筋が走る。

オリビエに振り回されるのはもう慣れっこだ。そんなことでいちいち本気で腹を立

てることは少なくなった。

けれど今日は違う。オリビエが突然こんなことをしだした意味がまったくわからな

い。

部屋の中から鍵をかけ、誰も入れようともせず誰にも何も言わずに部屋にこもり

きることなど共に過ごすようになってはじめてのこと。ただの悪戯だとは思えない。

……1つだけ思い当たる節がないわけでもないが、それでもこんな風に閉じこもっ

てしまったことはどうしても繋がらない。

「………………」

でも、やはり思い当たる出来事は1つしかない。

仕方なくミュラーはあの時のことを思い出すことにした。























……話は昨日の夜にさかのぼる。

昨日は皇帝陛下の誕生日。国を挙げての祭りが行われ、オリビエも宮城に顔を

出すことになったのだ。

帝国中から皇族や貴族達の集う豪華絢爛な生誕祭。

皇帝陛下の誕生した日を祝いながらも、くだらない噂話に花を咲かせることも決し

て忘れない。

オリビエはそんな場が苦手だったが、仮にも皇帝の息子である皇子が顔を出さな

いわけにはいかない。話しかけられれば適当に愛想笑いを返し、半ば自棄になり

ながら料理を口に運んで、早く時間が過ぎてほしいとばかり願っていた。



……けれどそこで事件が起こった。

皇帝陛下を祝い盛り上げる輪の中に、過激派のテロリストのメンバーが紛れ込ん

でいたのだ。

隠し持っていた短刀を振りかざしながら、テロリストが皇帝に向かい襲い掛かる。

けれど側にいた護衛たちの手でその襲撃は空振りに終わってしまう。

そのまま軍人達によって捕らえられそうになるテロリスト。けれど彼は舌打ちをし

ながらも、すぐ側にいる少年の姿を視界に映す。


それはその時たまたま皇帝に呼ばれて側にいた少年……オリビエこと、オリヴァ

ルト皇子。テロリストの目が狂気に光り、握り締めた刃をオリビエに向ける。

オリビエは一瞬、何が起こったのか理解できずその場に硬直することしかできな

いでいた。

けれどぎらついた目をした男が自分に向かって手を振り上げており、その手に照

明を浴びて鈍い光りを放つ何かを見た瞬間、男が自分を襲おうとしているのだと

いうことだけがわかった。

だが、もう遅い。

男と自分との距離はほんの数歩分しかなく、固まってしまっている体をどう動かせ

ばよいのかがわからない。

護衛たちは皇帝陛下に付きっ切りでオリビエに割く余力を持ち合わせていない。

オリビエにできたのは、両手で顔を覆うようにしてただ目をぎゅっと強く瞑ることだ

け。



最後に見たのは、煌く銀の閃光。



その次にオリビエを襲ったのは、全身を包み込む何か。

その何かに押し倒すようにされ、硬い大理石の床に背中をしたたかに打ち付け

る。

……けれど、オリビエが思っていたような痛みは襲ってこない。

背中を打ったことで小さな呻き声を上げながらもオリビエは目を開ける。

そして大きく見開いた。

まず目に飛び込んできたのは、とてもよく見慣れた青。

そしてその青と対照的な鮮やかな赤。

『……ミュラー……?』

オリビエの呟きに、自分の上に圧し掛かるようにしているミュラーの青い目が僅か

に細められる。

その額を伝う、一筋の赤い血。

何が起こったのか理解できずにいるオリビエを余所に、ミュラーはすぐさま体を起

こすとオリビエに背を向けた。

まるでその背でオリビエを守るように。

2度目の攻撃も空振りに終わった男が、体をふらつかせながらも3度目の襲撃に

備えて体勢を整える。それと同時にミュラーも腰に下げた剣に手をかけた。

――あとは一瞬の出来事だった。

ミュラーが剣を振り上げるのと同時に、鋼と鋼がぶつかり合う硬質な音が響き渡

る。

宙を舞ったのは、短刀。

ミュラーの抜いた剣の切っ先が男の短刀を弾き飛ばしたのだ。

くるくると孤を描きながら短刀は宙を舞い、小気味良い音を響かせながら床に落

ちる。

沈黙が場を支配する。

男はまさかこんな子供に剣を弾かれるとは思っていなかったのだろう。信じられな

いと言いたそうに目を見開き、肩で大きく息をするミュラーを凝視する。

ミュラーはまだ剣を構えたまま男を睨みつける。もしまだ向かってくるのなら容赦

はしない。その目は、テリトリーを侵された明らかな獣の光を帯びていた。

けれど沈黙が訪れていたのはほんの数瞬だけ。すぐに怒声が飛び交いあい、そ

こでやっと時間は動き始め、その場にいた軍人達が男を取り押さえる。

人々が騒然としている中、もう危険はないと判断し、ミュラーは大きく深呼吸をして

呼吸を整えると剣を鞘に収めてゆっくりとオリビエの方を振り返る。

『……オリビエ。大丈夫か?』

まだ呆然としているオリビエに、ミュラーは不安を取り除くように笑う。

手を差し伸べてオリビエに立ち上がるように促す。

……けれどオリビエは、上体だけを起こした格好のまま動かない。

ただ目を大きく見開いてじっとミュラーを見つめるだけ。

『……オリビエ?』

そんなオリビエの様子にミュラーが首を傾げさせる。

その呼びかけにもオリビエが反応を示す様子はない。普段なら、ミュラーから手を

差し伸べられれば喜んで飛びついてくるのに。

『………………』

『………………』

オリビエが黙り込むのでミュラーも何も言うことができない。

伸ばした手だけが虚しく宙に浮く。

人々のざわめきが耳に痛い。

それでもオリビエもミュラーも、どちらからもその場を動くことができなくて……









……結局その後、さすがにパーティはお開きとなってしまった。

ミュラーは怪我の手当てのため叔父に連れられて救護室に向かったが、オリビエ

は他の護衛を伴ってそのまま自室に戻ることになった。

ミュラーの怪我はオリビエを庇った時に短剣が掠っただけなので、血は出ている

が怪我自体はそうたいしたものではなく、消毒をして包帯を巻いただけで事なきを

得た。

けれどミュラーにとっては怪我なんかよりも、オリビエを守ったということで叔父か

ら誉められたことの方が何倍も嬉しかった。

手当てを終えた後、念のためにオリビエの元に行こうかとも思ったが、もうすでに

寝入ってしまったと使用人に聞いたので『こんなことがあったばかりなのに呑気な

ヤツだ』と呆れつつ半ば感心しながら、その日はミュラーも部屋に戻って休むこと

にした。









「………………」

そして、今に至る。

夜が明けて朝が来て、いつもどおりにオリビエの部屋に向かったのだが、ミュラー

が目にしたのはオリビエの部屋の前で困りきったようにしている見慣れた使用人

たちの姿。

何事かと聞いてみれば、どうやらオリビエが中から鍵をかけてしまって開けてくれ

ないとのこと。

意味がわからずミュラーも扉を叩くが、確かに中からは何の反応もない。

最初は冷静に対処していたミュラーだが、元々あまり気の長い方ではない。時間

が経つに連れて苛立ちばかりが増してゆく。

「オリビエ! 開けないとドアをぶち破るぞ!」

ついには声を荒げてしまう。

後ろでミュラーの動向を見守っている使用人たちがおろおろとしているがそれに

は構わない。

けれどその時、カチリと扉の向こうから音がした。

鍵を外された。そう理解するのと同時にゆっくりと扉が開かれる。

「………………」

「………………」

ほんの少し開けられた扉の向こうから、小さな金色の頭が覗く。……オリビエだ。

「……ミュラーだけ、入っていいよ……」

今にも消えてしまいそうな声でそう一言。

ミュラーは後ろを振り向き、使用人たちに大丈夫だと目で合図を送ると言われた

とおりに一人で部屋の中に入った。

後ろ手で扉を閉めながらじっとオリビエを見る。

オリビエはまだ寝巻きのままだった。

赤い目に腫れぼったい瞼にボサボサの髪。オリビエが泣いていたのだろうという

ことはすぐにわかったが、あえてミュラーは何も言わない。

「……一体何なんだ。今更反抗期か?」

腰に手を当ててじろりとオリビエをねめつける。

その視線に一瞬オリビエが怯えたように身を竦ませた。

……なんだか弱い者いじめをしているような気分になるが、ここでひるめば負け

だ。

「それとも昨日のことか?」

ミュラーの言葉にオリビエの肩がビクリと震えた。それが肯定の意を示しているの

はあまりにも明らかなことだった。

やはりあの事件のせいか。怖がっていたようには見えなかったし、どこか大人び

た雰囲気を漂わせるところがあるから大丈夫だと思っていたがまだオリビエも子

供だったということだろう。

「大丈夫だ。もうあのテロリストは逮捕された。お前を襲う人間はどこにもいない」

安心させるようにミュラーは笑う。けれど、オリビエの肩はまだ小刻みに震えてい

る。

「俺がもっと早く気付いてやれればよかったな。あまりにも唐突すぎたから剣を抜く

余裕がなかった。突き倒したりして済まなかったな。痛いところはないか?」

こんなに怯えた様子のオリビエを見るのははじめてだった。ミュラーが思っていた

よりよほど怖い思いをしたということだろう。

「………………」

けれどオリビエは、そんなミュラーにぶんぶんと首を横に振る。

痛いところはない、という意味ではない。もっと根本的な何かが間違っていると…

…そう訴えたそうな様子。

「オリビエ?」

いつもと明らかに違う幼なじみの様子にミュラーは目を丸くさせるしかない。

しばらくオリビエはゆるゆると力なく首を振っていたが、やがてをそれを止めると

赤く腫れた目でミュラーを見上げる。

「怪我……大丈夫……?」

「は?」

一瞬何のことを言われているのかわからずぽかんとする。が、オリビエの視線が

自分の顔のやや上の方に向けられていることがわかり、そこでやっと自分の頭に

包帯が巻かれていることを思い出した。

「あぁ、これか? 単なるかすり傷だ」

言いながら包帯を軽く叩く。

元々痛みなどほとんどなかった。包帯を巻くのも大げさだと思っていたが、頭部は

テープが使えないので包帯で止めるしかないと言われて仕方なくこうしているだけ

だ。

「……ごめん……」

けれどオリビエは、ミュラーとは逆に今にも消えてしまいそうな声で呟く。

ミュラーにはオリビエが謝る理由がわからず眉根を寄せる。

「ごめん……ボクのせいだよね……」

続けられたのはそんな一言。そこでミュラーはやっとオリビエの言いたいことを察

する。

オリビエは、この怪我が自分のせいだと思っているのだ。そのことを理解し、一瞬

呆気に取られたように目を真ん丸くさせるが、すぐに呆れたように笑う。

「なんだ。お前、そんなことを気にしてたのか? お前が心配するようなことは何も

ない」

こんなに怯えているから何事かと思えば。ミュラーは軽く息をつく。

「ちょっと派手に血が出たから驚いたか? 本当にただのかすり傷だ。俺の言うこ

とが信じられないなら叔父上に聞いてくればいい。……そんなことより、お前が怪

我をしていないのなら何よりだ」

再度、ミュラーはオリビエを安心させるように笑う。……それでも、オリビエの震え

は止まらない。

「……なんで……」

「ん?」

「なんで、ボクを庇ったりなんかしたの……?」

先ほどよりもか細い声。ミュラーの顔から笑みが消える。

「……オリビエ?」

「そんなことしなければ……余計なことをしなければ、怪我なんてしなくて済んだの

に……」

「余計なことって……何を言ってるんだ。俺が一体何のためにお前と……」

「ボクはミュラーに怪我をさせるために一緒にいるんじゃない!!」

ミュラーの言葉を遮るような叫び。

唐突なことに……その言葉に、今度はミュラーが体を強張らせる。

同時にオリビエの脳裏に昨夜の光景がフラッシュバックした。

男に襲われそうになった自分。

次の瞬間、ミュラーに押し倒された。

そう。ミュラーが庇ってくれたのだ。

けれどミュラーの額に赤い血が流れている。

自分の代わりにミュラーが怪我をしてしまった。

……そう。自分の、せいで。

昨日は本当にただのかすり傷で済んだかもしれない。

でも、それは単なる偶然だ。運がよかっただけに過ぎない。

もしまた同じようなことが起これば……次はどうなるのか、それは誰にもわからな

い。

もしかしたらかすり傷程度では済まないのかもしれない。

もしかしたら……怪我などでは、済まないのかもしれない。

「ボクは……ボクのせいで、ミュラーに怪我なんかしてほしくない!!」

昨日のあの瞬間までオリビエは忘れていた。

オリビエはミュラーのことを友達だと思っているし、ミュラーもそう思ってくれている

と思っていた。

でも、違った。本当は違うのだ。

自分は皇子で、ミュラーは従者で。

だから、昨夜のようなことが起こればミュラーの行動は至極当然のこと。そのため

に常に側にいるのだから。

でも……でも、それが今は何よりも恐ろしくて。

自分のせいで友達が傷つくことが、堪えられることができなくて。

「ミュラーが危険な目に合うくらいなら、一緒にいない方がいい!!」

「………………」

だからただ、胸の内を叫ぶことしか出来ない。

……ミュラーは、そんなオリビエの叫びを聞いていることしか出来ない。

そんな風に思われているなど思ってもいなかった。

オリビエが危険に晒されればそれから守るのが自分の務め。

だから昨夜のことで叔父のように褒められるのならともかく、まさか怒鳴られるだ

なんて。

「…………――――ッ!!」

オリビエの赤く腫れた瞳から、また涙がぼろぼろと零れ落ちてくる。

抑えたいのに、抑えることができなくて。

頬を伝う熱い感覚を拭うことができなくて。

「っ!!」

感情に任せるようにミュラーに駆け寄り、しがみつく。

嗚咽を漏らしながらミュラーの胸に顔を埋め、体を小刻みに震わせる。

一緒にいない方がいい。そう叫んだものの、本心ではそんなことは微塵も思って

いない。

……でも、だからこそどうすればいいのかがわからない。

一緒にいたい。でも、一緒にいればミュラーが危険な目にあうかもしれない。それ

なら一緒にいない方がいい。…………でも、やっぱり一緒にいたい。

同じ言葉が何度も何度も頭の中をぐるぐると回る。

一体どれが自分の本心なのかわからなくなってしまう。

「……オリビエ……」

そしてそれはミュラーも同じだった。

今まで悪戯を叱られたりして泣く姿はよく見ていた。

けれど自分のために怒鳴りちらし、挙句の果てに泣かれたのははじめてで、どう

すればいいのかがわからない。

「………………」

でもオリビエはまだ泣いている。

縋りつくように震える手でミュラーの服を掴んでいる。

……どんな理由があるにせよ、オリビエをこんな風に泣かせてしまったのは他な

らぬ自分自身だ。

だから今、自分のすべきことは……

「……ごめん……ごめんオリビエ。俺が悪かった」

ミュラーはゆっくりとオリビエの頭と背に手を置く。

そのまま、子供をあやすように震える背を撫でてやる。

「俺は無事だから。どこも痛くないから。……だからもう泣くな」

そう言ってやると、オリビエはむせび泣きながらもミュラーの胸に顔を押し付けな

がらこくこくと頷く。

「もう絶対に無茶はしない。……約束するから」

ただそう言って背を撫でて、安心させてやることしか出来ない。

でも、これでオリビエが泣き止んでくれるのなら。……また、笑ってくれるのなら。






そうしてオリビエが落ち着いて、やがて泣き疲れて眠ってしまうまで、ミュラーは決

してオリビエの背から手を離さなかった。































「……ん?」

その日、朝の職務を終えたゼクスを出迎えたのは、頭に包帯を巻き、いつになく

真摯な眼差しを向けた甥っ子の姿だった。

時刻はちょうど昼に差し掛かった頃。ミュラーは腰に剣を下げ、まずは叔父に一

礼する。

「……叔父上。稽古をつけてくれませんか?」

ミュラーの声音、そして表情にゼクスの眉がピクリと動く。

いつもと何か様子が違う。それはすぐにわかったが、あえてそのことは口に出さな

い。

「皇子はどうなされたのだ?」

それよりまず、ミュラーがここにいる理由を聞かなければならない。

ミュラーは日中はオリビエの側にいるのが職務のようなものだ。オリビエに認めら

れない限りは側から離れることを許されない。

「眠ってます。……やっぱり昨日のことがいろいろ堪えたようです。昨夜は眠れな

かったみたいで、さっきやっと寝付いたところです」

言いながら僅かに視線を逸らす。

安堵したような、それでいて複雑な感情を帯びた目。

ゼクスにはオリビエとミュラーの間に何があったのかはわからない。けれど、オリ

ビエは時折勉強を教えている教え子だし、ミュラーは生まれた時から知っている

甥っ子だ。

言われなくても何かを察したのだろう。「そうか」とだけ呟くと、改めてミュラーに向

き直る。

「稽古をつけてやっても構わないが……その前に一つ、聞いておきたいことがあ

る」

「……なんですか?」

「何故お前は強くなりたいのだ? 皇子をお守りするためか?」

「え……」

叔父の突然の言葉にミュラーは目を丸くさせる。

一瞬何かを考え込むように俯くが、すぐに顔を上げた。

「もちろんそれもあります。……でも一番は、俺自身が強くなるためです」

「ほう? 皇子より、自分のためと言うのか?」

「いえ」

ゼクスの言葉にミュラーは首を横に振る。

そして、真っ直ぐに叔父の目を見据えた。

「俺が怪我すると、あいつが泣くから。……それなら怪我なんてしないくらい強くな

ればいい。そしてあいつを守ってゆけばいい。そう思ったからです」

そう言い切るミュラーの言葉と瞳は、強い決意の光を帯びていた。

何者にも揺るがない意志。

己の誓いを貫き通そうとする心。

「………………」

「………………」

ゼクスはただじっとミュラーを見る。ミュラーもただじっとその目を見返す。

「………………」

やがてゼクスの方から視線を逸らす。ミュラーに背を向けて歩き出した。

「……来なさい。今日から少々厳しくゆくからな」

「……はい!」

腹の底から出る声に、剣の鞘に掛けられた手に力が入る。全身の血がどくどくと

鳴っていた。



……そう。強くなる。誰でもない自分のため、そして主君のために。



ミュラーは小走りに、けれど一歩一歩を踏みしめるようにして、先を行く叔父の背

を追いかける。

これがまた自分の新たな一歩になるのだと……そんな確信を抱きながら。





































日記で帝国コンビ語りを書いてたら出てきたネタ。
オリビエはミュラーのことを親友だと思っているけど、ミュラーは友である以前に主人だということが大前提。という感じ。
こんなやり取りが一度はあったんじゃないかなーと妄想。というか願望(笑

2007.11.25 UP

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